大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和45年(行ク)2号 決定 1970年10月24日

申立人 清原続

被申立人 徳島県公安委員会

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

第一、申立人の申立の趣旨および理由

申立人は、「被申立人が申立外石井皓に対し昭和四五年七月一四日付徳島県公安委員会指令防第阿南七号をもつてなした風俗営業許可の効力は、当裁判所昭和四五年(行ウ)第五号行政処分無効確認事件の判決確定に至る迄これを停止する」との裁判を求め、その理由として、要旨次のとおり主張した。

一、被申立人は、申立外石井皓に対し、昭和四五年七月一四日付徳島県公安委員会指令防第阿南七号をもつて、右石井が徳島県阿南市富岡町あ石六番地の二〇においてぱちんこ遊技場営業許可の行政処分(本件許可処分という)をなした。

二、しかし、本件許可処分は、次の理由により無効または取消を免れない。

ぱちんこ遊技場の営業は、風俗営業等取締法第一条に規定する風俗営業に該当し、同法第二条第一項は、風俗営業を営もうとする者は当該都道府県が条例で定めるところにより都道府県公安委員会の許可を受けなければならないと規定し、これに基く風俗営業等取締法施行条例(昭和三二年一二月二四日徳島県条例第五七号)第一四条は、公安委員会は、風俗営業をしようとする場所が、学校、図書館、病院等の特殊施設の敷地の周囲おおむね一〇〇メートルの区域内にある場合で、善良の風俗を害するおそれがあると認められるときは、その営業の許可をしてはならない旨規定し、右規定の「病院等」には医院を含み、「特殊施設の周囲おおむね一〇〇メートルの区域」とは騒音等を防止する趣旨で定められたことからすると特殊施設から直線距離が一〇〇メートルの区域を指すものと解せられる。ところで申立人は前記石井のぱちんこ遊技場の設置予定場所である阿南市富岡町あ石六番地の二〇から南に約二〇メートル足らずの距離にある同市同町あ石二番地の二において患者一〇名を収容する施設を有し、入院する患者が常時六、七名を下らない産婦人科医院を開業しているものであるが、右石井がぱちんこ遊技場の営業を開始するときは、遊技場の騒音ばかりでなく、同所に出入する客の乗用する自動二輪車による騒音(遊技場の騒音は閉店時の夜一〇時ないし一一時頃ことに激しく、右時刻は、申立人方入院患者の就寝時にあたる。)、さらには遊技場建物の南側(申立人方医院に近い側)に設けられることになつている二ケ所の出入口を通行する遊技場客の騒音等が申立人方医院の患者に与える精神的苦痛、患者および出産児の健康に及ぼす影響ははかり知れないものといわなければならない。

もつとも、本件許可処分は、防音設備を完全に行うとの条件付でなされたものであるが、防音設備を完全にすることはとうてい不可能である。

なお、前記石井は平井組の組員であつて、同組はいわゆる要注意団体であるとのことである。

したがつて、本件許可処分は、前記ぱちんこ遊技場と申立人方医院の距離関係その他の状況から社会的に非離されるべきもので著しく妥当性を欠くものというべきである。

三、申立人は本件許可処分の効力の停止を求める緊急の必要性がある。

すなわち、前記石井が遊技場の営業を開始すれば、申立人方医院の患者数は激減することが予想せられ、そうでないとしても前記のとおり患者に与える精神的苦痛および患者と出産児の健康に及ぼす影響ははかり知れないものがあるのに、前記石井は現在地盤を造成中で、遊技場建物の建築が完成すればその規模が大きいためこれを収去することは不可能に近く、申立人は回復困難な損害を蒙るおそれがある。

四、よつて、本件許可処分の効力の停止を求めて本件申立に及ぶ次第である。

第二、被申立人の意見

被申立人は、主文同旨の裁判を求め、要旨次のとおり主張した。

一、申立人は本案について行政事件訴訟法第三六条および第九条に定める原告適格を有しない。

(一)  風俗営業等取締法は、営業所内の風紀びん乱を規制することのほか、その地区の健全な風俗維持をも目的とするものであるとしても、そのことからたゞちにその地区住民の誰もが風俗営業許可処分の無効確認または取消を求める法律上の利益を有するものとはいえない。

申立人の主張するところは、ひつきよう前記石井のぱちんこ営業に起因して発せられる騒音によつて被害をうけるというにあるところ、申立人が右騒音被害を受けるおそれが全くないことは後記のとおりであるが、仮りにそのおそれがあるとしても、右の騒音は風俗営業に特有な現象ではなく、また、遊技場に出入りの客の乗用する自動二輪車等の騒音はほんらい風俗を取締るべき同法の趣旨には直接関係がない。

したがつて、申立人は本案の訴につき法律上の利益を有しない。

(二)  さらに、前記本案の訴は本件許可処分の無効確認を求める部分については現在の法律関係に関する訴によつて目的を達することができないものに該当しない。

すなわち、本件許可処分の無効が確認されたとしても、前記石井が事実上営業を開始した場合には右無効確認判決により直接右営業を差止める効果はないから、紛争が最終的に解決されるわけではない。むしろ、本件紛争は本件許可処分の無効を前提として前記石井に対する私法上の請求によつて解決すべきである。

二、(一) 申立人の主張に対する認否

(1)  第一の一記載の事実は認める。

(2)  同二記載の事実中、申立人が本件ぱちんこ遊技場設置場所からその主張の距離にある場所で患者一〇名を収容する施設のある産婦人科医院を開業していること、右遊技場の建物の南側(申立人方医院の側)に出入口が二ケ所設置される予定であることは認めるが、その余の事実は争う。

(3)  同三記載の事実中、前記石井が現在地盤を造成中であることは認めるが、その余の事実は争う。

(二) 本件許可処分は適法であり、しかも、申立人に対しなんらの損害も及ぼすものではない。

(1)  本件許可処分に係るぱちんこ遊技場の所在地は、国鉄阿南駅から約一五〇メートル西方にあり、同駅玄関口から発するいわゆる駅前通りが旧国道五五号線と交差し、さらに西方に延長された道路に面し、右交差点に近接した位置にあるが、右道路の両側はバー、カフエーなどの風俗営業のほか飲食店、スタンドバーなどのある歓楽街を形成し、これと交差する旧国道の両側は一般商店街を形成し、前記交差点付近は阿南市の中心的繁華街となつており、前記ぱちんこ遊技場の所在地は歓楽街のほゞ中心部にあたつている(右遊技場を中心に半径一〇〇メートルの範囲内には風俗営業の許可を受けたバー、カフエー等が七軒あるほか食堂、スタンドバー等これに類似する店舗は一五軒に及んでいる。)。

したがつて、右場所にぱちんこ遊技場の許可をしたことは、その環境として極めて自然である。なお、主に商店経営者からなるその地区の住民としては、おおむね前記石井のぱちんこ遊技場の許可につき賛成の意向である。

さらに、前記石井のぱちんこ遊技場の建築予定建物と申立人方医院の建物との最短距離は、二〇メートル足らずとなる予定であるが、その間に他の民家および露地をはさんでおり、しかもそれぞれその面する道路を異にし、遊技場店舗入口は申立人方医院と反対の北側に設けられることになつているから、互にその建場の背後が相対する関係にあるのにすぎない。したがつて、遊技場客の出入りは勿論遊技場内の状況も、申立人方医院から全く望見し得ないものである。また、申立人方医院の入口から遊技場店舗の入口に至る道路上の距離は約三〇〇メートルに及び、その間には多数のバー、スタンド、旅館などがある。このような事情からすると前記ぱちんこ遊技場が申立人方患者に及ぼす風紀上の影響は全くない。

(2)  前記石井は平井組の準構成員にすぎず、右平井組はいわゆるテキ屋集団であつて博徒などの本来的な違法集団ではなく、右石井のみならず同人の家族および営業管理者申立外中野弘美についても、前記県条例第一三条所定の欠格要件に該当する事実はない。

(3)  前記石井のぱちんこ遊技場の営業が申立人方患者に騒音被害を与えるおそれは全くない。

すなわち、本件ぱちんこ遊技場の建築予定建物の構造は南側(申立人方医院の側)の約半分は鉄骨ブロツク造であり、遊技場として使用される北側(申立人方医院の反対側)の約半分は、鉄骨スレート張で、その内装には吸音材を使用し、窓は一切設けず、北側の遊技場と南側諸室との境は鉄筋コンクリート壁で仕切り、さらに、営業所敷地の南側には遮音のため高さ二・二メートルのコンクリート塀が設けられることになつている。このように、営業所の建築予定建物には完全な防音設備がなされるほか、前記のように営業所と申立人方医院との間には民家一軒と右民家のブロツク塀および露地をはさんでいるのであるから、営業所における音響が申立人方医院の病室にとゞくことは全く考えられない。

申立人は、営業所に出入りする客の乗用する自動二輪車の騒音がある旨主張するが、遊技場に出入りする客の車輛による音響は風俗営業等取締法の規制するところでないことは前記のとおりであり、しかも営業所の自転車置場はその北側(申立人方医院と反対側)道路に面した場所に設けられることになつているので、同所での自動二輪車等の始動音が申立人方迄とどくことは殆んど考えられず、かりに申立人方迄とゞくことがあるとしても、前記交差点付近を通行する一般車輛からの音響以上のものではないから、受忍義務の範囲内にあるものというべきであり、これをもつて音響被害というにはあたらない。なお、申立人は、自動二輪車の始動音が閉店時に一斉に発せられるように主張するが、ぱちんこ遊技場にあつては、閉店時に客が一斉に退店するものではないから申立人の主張は誇張に過ぎないものというべきである。また、右遊技場の建築予定建物の裏側(申立人方医院の側)出入口は、非常口ないし従業員の勝手口として使用されることになつており、自動二輪車等が出入することはできないから、同所付近からの騒音が発生するわけはない。

第三、疎明<省略>

第四、当裁判所の判断

一、被申立人が、申立外石井皓に対し、昭和四五年七月一四日付徳島県公安委員会指令防第阿南七号をもつて、右石井が徳島県阿南市富岡町あ石六番地の二〇においてぱちんこ遊技場の営業を許可する旨の本件許可処分をなしたこと、申立人が被申立人を被告として、昭和四五年八月一三日、当裁判所に、本件許可処分の無効確認を求める旨の訴訟を提起し、右訴訟が当裁判所昭和四五年(行ウ)第五号行政処分無効確認事件として係属し、さらに、申立人が同年九月二六日、同裁判所に、同日付準備書面をもつて、右事件につき予備的に右許可処分の取消を求める請求を追加する旨の申立をなしたことは、当事者の一致する主張ならびに右行政処分無効確認事件の訴訟記録に照らし明らかである。

二、そこで、申立人が、本案訴訟について行政事件訴訟法第三六条および同法第九条所定の原告適格を有するか否かかについて検討する。

行政事件訴訟法第三六条は、無効確認の訴は、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り提起することができる旨規定し、同法第九条は、処分の取消しの訴えは当該処分又は裁決の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる旨規定するが、右各規定にいう法律上の利益とは、単に具体的な権利のみならず当該処分の根拠たる行政法規に照らし、具体的個別的に認められる法的に保護された利益ないし法的に保護に値する利益をも包含するものと解され、右の利益を行政庁の行為により侵害された者は、たとえその行為の直接の相手方でないとしてもなおその無効確認または取消を求めることができると解すべきである。

ところで、ぱちんこ遊技場の営業は、風俗営業等取締法第一条第七号の風俗営業に該当するが、同法は、風俗営業がややもすると、売春や賭博その他風俗を害する犯罪を誘発するおそれがあり、または、性道徳のびん乱と奔放な射幸心を生じやすいためにこれを規制し、明るい文化的な社会環境を確立するとの公益上の目的に奉仕するものである。しかして、同法第二条は風俗営業を営もうとする者は当該都道府県が条例で定めるところにより都道府県公安委員会の許可を受けなければならない旨規定し、同法に基く前記県条例第一四条は、場所に関する風俗営業許可の基準として、公安委員会は、営業をしようとする場所が次の各号の一に該当する場合は許可をしてはならない。一、学校、図書館、病院等の特殊施設の敷地の周囲おおむね一〇〇メートルの区域内にある場合で善良の風俗を害するおそれがあると認められるとき二、その他善良の風俗を保持するため著しく支障があると認められるときと規定しているのである。このように、同条例が風俗営業の許可にあたり、近隣に特殊施設のある場合の許可条件をとくに厳格にしたゆえんは、近隣にある学校、図書館等の教育学習施設や病院等の医療施設等精神の沈静を要求される特殊施設にあつては、その設置目的や業務内容からして一般日常生活以上にその周辺の健全で静穏な社会環境を維持することがとりわけ肝要であるとの見地に立ち、近隣に風俗営業が行われることによつて生ずるこれら施設の業務に支障を来すことを防止するためであると解することができる。

したがつて、同法第二条による風俗営業許可処分のなされた営業場所の近隣とくにその一〇〇メートル以内の至近距離にある病院等を経営する者は、右許可処分によつて風俗営業が行われ、これに起因して風紀がびん乱し、または、その周辺がけん騒にわたるなどしてその医療業務の遂行に支障を生ずるおそれがあるときは、当該処分の無効確認ないし取消を求める法律上の利益を有するといわなければならない。

これを本件についてみると、申立人は前記石井のぱちんこ遊技場の設置予定場所である阿南市富岡町あ石六番地の二〇から南に約二〇メートル足らずの距離にある同市同町あ石二番地の二において患者一〇名を収容する施設を有する産婦人科医院を開業していることは当事者の一致して主張するところであつて、このような位置関係にある申立人方医院の至近距離にぱちんこ遊技場の営業が行われ、申立人の主張するように、右営業によつてその周辺がけん騒にわたる等の場合には、申立人方医院の入院患者等に対して行う医療業務に支障を及ぼすおそれがあるものといわざるを得ないから、申立人は、本件許可処分の無効確認ないし取消を求める法律上の利益を有するものというべきである。被申立人は申立人の蒙る損害は単に騒音被害にすぎず右騒音被害は風俗営業のみに特有の現象ではない旨主張する。なる程ぱちんこ遊技場に出入りする客の車輛による騒音被害は同法の取締対象外であることは明らかであるが、ぱちんこ遊技場の営業所における騒音については、前記県条例第一七条第八号は、ぱちんこ遊技場の設備の基準として、近隣に迷惑を及ぼさないよう隔壁その他の必要な防音装置をすることを定め、また、同条例第二二条第一〇号は、営業者の遵守事項として営業所で人声、楽器、ラジオ等の音を異常に大きく出して近隣に迷惑をかける行為をし、又は客にこれらの行為をさせないことを命じているのであつて、右各規定は、ぱちんこ遊技場の営業に起因する騒音については、たとえその騒音が直接風紀を乱すものでない場合であつてもこれによる影響を考慮してとくに規制したものと解せられ、右騒音が風俗営業に特有な現象でないからということからたゞちに申立人に本件許可処分の無効確認または取消を求める法律上の利益を欠くものということはできない。

また、かりに、申立人に、前記石井のぱちんこ遊技場の営業を阻止する手段として右石井に対する何らかの私法上の請求が許されるとしても、本件許可処分の無効確認を求めることによつて、申立人と右石井間の紛争がより直截的に解決されることは否定し得ないところであるから、右訴が現在の法律関係に関する訴によつて目的を達することができないものに該当しないということはできない。

したがつて、申立人は本案訴訟たる本件許可処分の無効確認ないし取消を求めるにつき、原告適格を有するものというべきである。

三、そこで、本件許可処分の瑕疵の有無について検討する。

申立人は、本件許可処分は著しく社会的妥当性を欠く違法な行政処分であり、申立人は、本件許可にかかる前記ぱちんこ遊技場の所在地が申立人方医院と至近距離にあるため、遊技場の営業による騒音および遊技場客の車輛による騒音被害を受ける旨主張する。なる程、申立人方医院と前記ぱちんこ遊技場予定地の距離は約二〇メートル足らずであることは前記のとおりであるが、疎甲第二号証の一、二、同第三号証の一、二、同第四号証の一ないし六、疎乙第二号証の七ないし一〇、一二ないし一四、同第九号証、同第一二号証、同第一四号証、同第一五号証、同第一八号証、同第一九号証を綜合すると、右両者の間には巾約〇・八メートルの露地およびブロツク塀で仕切られた他の民家及びその敷地が介在し、両者はそれぞれその表口が面する道路を異にし、互にその裏側部分が向い合う関係にあり、遊技場の建築予定建物の南側に設けられる二ケ所の出入口は非常口であつて遊技場客が出入りするものではなく、しかも南側敷地上には高さ約二・二メートルのブロツク塀が設けられることになつているため、申立人方医院から遊技場客の出入りは勿論遊技場内の状況は全く見透すことができず、申立人方医院の入口から遊技場の表口に至るには廻り道となつていて、その道路上の距離は約三〇〇メートルであること、本件許可処分は営業所の騒音設備を完全にすることを条件としてぱちんこ遊技場の営業を許可したものであるところ、遊技場建物の構造は、南側(申立人方医院に近い側)は鉄骨ブロツク造で、その一階部分は便所、倉庫、景品売場等が、その二階部分は便所、倉庫、食堂、電気室、機械室等が設けられ、その北側は鉄骨スレート張で、一階部分の北側が遊技場として使用され、建物の内装には吸音材が用いられることになつており、さらに営業所敷地の南側に設けられる前記ブロツク塀が遮音の効果を有するものであることが一応認められ、以上の事実によると、前記ぱちんこ遊技場の営業に伴う騒音は、客の車輛による騒音を含めて申立人方医院に及ぼす影響は極めて軽微であつて、右騒音は、申立人方医院が入院患者等の精神的安定をとくに必要とする産婦人科医院であり、同医院において開腹手術等が常時行われることを考慮しても、同医院の患者の受忍の限度を超えるものではないというべきである。しかも、前記疎甲第二号証の一、二、疎乙第二号証の七ないし一〇、一二、同第一五号証と同第五号証を綜合して一応認められる前記ぱちんこ遊技場の設置場所は、阿南市の駅前通りの延長線上にあり、その面する道路の両側は一般商店とバーカフエー等の風俗営業のほか飲食店等のある歓楽街ないし商店街となつており、遊技場の設置場所は、そのほゞ中央部に位置し、申立人方医院およびその付近の若干の住宅等は右道路の裏側部分にあたること、右設置場所の周囲約一〇〇メートルの範囲内には他にも医院、保育所等が散在するが、いずれも、おおむねその周辺部に位置すること等付近の環境を併せ考えると、本件許可処分が善良の風俗を害する違法の行政処分であるとはとうていいえない。

なお、申立人は、前記石井がいわゆる要注意団体である平井組の構成員である旨主張するが、疎乙第三号証、同第四号証、同第一四号証によると、前記石井は勿論その家族営業管理者等について前記県条例第一三条所定の欠格要件に該当する事実はないことが一応認められる。

四、そうだとすると、申立人の本件申立は本案について理由があると見える場合に該らないから、その必要性について判断するまでもなく、申立人の本件申立は失当として却下を免れず、申立費用は申立人に負担させることとしたうえ、主文のとおり決定する。

(裁判官 山下巌 福家寛 佐野久美子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例